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Ann Hamilton "voce"

アン・ハミルトン[ボーチェ](展覧会)の感想です。

 6月2日の夜に書くと言っていたのに、今になってしまいました。ごめんなさい。
作品を観たあとで、熊本名物・馬刺しを食べに繰り出しちゃったのです。美味しかった。。。

Ann Hamilton \"voce\"_f0039916_2521522.jpgこの日、16時ごろに熊本市内に到着。ネットで適当に予約したホテルが熊本城の真ん前で、せっかくだからと、まずはお城見物に。30分だけと思っていたら、1時間以上いてしましました。
オリジナルの熊本城は日本最後の内戦・西南戦争の際に消失してしまい、現在の大・小の天守閣は1960年に復元されたもの。城の遺構としての見ごたえは十分でしたが、中世から近代へと日本の歴史が移り変わる舞台のひとつになっていたという史料としても興味深い展示物ばかりで、実は歴史好きの僕としては、時間がたつのをすっかり忘れてしまったのでした。(いかん、いかん。)

Ann Hamilton \"voce\"_f0039916_252572.jpgさて、本日の目的はアンの展覧会です。会場である熊本市現代美術館までは熊本城から歩いて6~7分で行けます。市電の”通町筋”駅の少し先の「びぷれす朝日会館」の中にあります。


熊本城から通町筋方面を見たところ。そう、熊本には路面電車が走っています。
懐かしい…。



Ann Hamilton \"voce\"_f0039916_2532029.jpg美術館自体の入館料は無料ですが、アンの[ボーチェ]が展示されている企画展示室には1000円の入館料が必要です。料金を払ってさっそく中へ。中に入るとスタッフの方から様々な鳥の鳴き声が入れられたオーディオプレイヤーを手渡され、これを耳につけます。

作品は2つの展示室に分かれています。最初の部屋にはたくさんの机の上に昔の日本の古い着物が置かれ、それを古い電気スタンドが照らしており、それぞれがビニールの幕で覆われています。おそらく、それぞれの人の人生を表現いているのではないでしょうか?
いくつかの机の上には立ち上がることができて、自分の足下にある着物と電気スタンド、部屋全体に並べられた机とその上に乗せられた着物と電気スタンドを眺め回すことができます。

説明にはこうあります。

懐かしい学校の作業台。
熊本の人々の喜びと悲しみが染み込んだ着物。
卓上ランプが照らし出す光。

テーブル(作業台)にかけられたビニールが、
視覚だけでは触れることができない
あいまいな記憶の断片を呼びおこします。


続いて、2つ目の部屋に入っていきます。
こんどはもっと広い展示室に、回転する映写機により壁をぐるりと回りながら、古い写真の人の顔と足もとが交互に写し出されています。それはまるで記憶の走馬灯のようです。
頭上にはビュンビュンと回転するアームの先にやはり回りながら音を出すスピーカーいくつもあり、それらから様々な音が流れてきています。それはとてもノイジーなのですが、どれも懐かしい感じのするサウンドでした。

真空管ラジオやランプの発する無機質な音の中で、
蝉やふくろうの鳴き声、私たちの発する鳥の鳴き声が
いきいきと経ちあらわれてきます。

〈voce〉とはイタリア語で「声」という意味です。

さまざまな〈声〉を聞きながら、今度は皆さんに鳥になっていただき、
人間の言葉では伝わらない、貴方の心の〈声〉を響かせてください。


・・・・・・・・

〈voce ヴォーチェ〉はアンが昨年の7月と11月に、熊本や阿蘇で聞いたクマゼミやヒグラシの声の印象から生まれた作品です。

(※以上、斜体字は美術館で配られていた説明書から引用)

Ann Hamilton \"voce\"_f0039916_2534734.jpg 会場には1時間以上いました。平日だったためか来場者は数名しかおらず、多くの時間をたったひとりで鑑賞することができました。
特に2つめのサウンドの部屋では、広い床の上に大の字になって寝転び、瞑想することさえもできました。なかなか贅沢な時間を過ごせたと思います。

横浜で〈line〉をパフォーマンスしたときとはまた別の感覚を得ることをできました。

やはりアンお得意の、そこにいる人間と、その人とかかわる様々なこと、たとえば時間、運命、自然といったものとの関係を表現しようとしていたのは確かです。
こういった壮大なテーマの作品は、記録として残されたものを見るのでは十分ではないし、ましてやアンの作品はそうそう国内でお目にかかることはできないようなので、はるばる現場を訪れて本当に良かったと思いました。

 しかし、熊本。今回訪れた現代美術館のほかに、県立美術館、博物館、伝統工芸館など、文化施設が異常に充実。僕が住む立川とはえらい違いだ。
by climbworks | 2006-06-07 03:23 | Art