今年もあと30分をきってしまいました。
ブログも放ったらかしで、すみませんでした。基本、バタバタと忙しい年でした。
そんな、バタバタとした日々の中で、もっとも印象に残ったことは、福島県白河市郊外にある聖ヶ岩の開拓でした。
僕の著書「アウトドアクライミング」を読んで下さった白河山岳会の渡辺さんが、この岩場の整備についてご相談の連絡をくださり、いろいろ伺うと、岩質が非常に柔らかいために、ケミカルボルトを使用するしかない、ということで、現地に技術指導に赴くことになったたのです。
福島県と言えば、東京電力・福島第一原子力発電所の事故が今なお終息しておらず、爆発事故以降、大量の放射線物質を今なお放出しつづけています。白河市は福島県でも南部に位置するため、県内でも比較的放射線量の低い地域とされていますが、それでも山間部に行けば、かなりの高さの放射線量が計測されます。
そんな場所に行くことは、正直、不安もありましたが、現地では普通に人々が暮らし、大人は野外活動もしているので、とにかく、現地に行って、見て、人々と話して、いったいどうなっているのかを知ろうと思いました。
福島の人たちは、僕が接した限りで感じたことをそのまま言えば、放射線の影響に関して、正確な情報を知らされず、政府や自治体の言うことを信じ、ただそこに居させられているように思いました。いっぽうで、自分たちで情報を集め、(特に小さなお子さんのいる家庭など)危険だと感じたならば、それぞれの判断で自主避難している人たちもいるといった状況でした。もちろん、避難にかかる費用は、警戒区域など以外は、自腹です。
個人的には、そんな状況は間違っていると思います。
さて、聖ヶ岩ですが、凝灰岩系の脆い岩質ですが、一番高い岩峰で高さが70m以上あり、僕が拓いたルートも最長30m×2ピッチというスケールのものもあります。傾斜こそ現代的とは言えませんが、クライミングの基本となる足使いや、ロープワークなどを学ぶには打ってつけの岩場であることは間違いありません。
ボルトはすべてケミカルアンカーを使用し、ビレイ点もラッペルステーションなどしっかりしたものを設置しています。
白河山岳会の皆さんも、岩の掃除や取り付きやアプローチ道の整備をはじめ、技術習得にも熱心で、非常に良く働いてくださいました。
岩場のすぐ下は、よく整備されたキャンプ場で、快適なバンガローや、子ども向けのアスレチック遊具、管理棟にはシャワーもあり、非常に快適な場所です。管理棟のご夫婦もとても良い方々で大変お世話になりました。
まわりにはハイキングコースもあり、秋には紅葉も楽しめる場所で、僕はここが本当に気に入りました。
原発事故さえなければ、家族でキャンプしながら何度もクライミングに訪れていたでしょう。
が、しかし、岩場取りつきやキャンプ場の放射線量は高く、場所によっては毎時0.8マイクロシーベルトを超えるところもあります。正直、子どもは連れて行けませんし、僕自身、宿泊は線量の低い、白河市街地まで戻っていました(市街地は、所により高いところもありますが、屋内に居れば、基本的には関東と同じか、気持ち高いぐらいです)。
こんな素敵な場所なのに、すべての人に「来てください!」と言えない現実を本当に悔しく思いました。ですが、整備開拓したルートは2013年の早い時期に何らかの形で発表される予定です。お子さんや、これから子どもを産む予定のある若い人たちにはオススメしませんが、年配の人にはぜひ訪れてみてほしいと思います。もちろん、自己責任で、ですが。
ちなみに、福島県内の東北自動車道、二本松から福島市あたりのサービスエリア内の植え込みで、手元の線量計で、最高毎時2.59マイクロシーベルトを計測しました。事故より1年半以上経過した2012年10月で、です(僕の住む東京西部で、通常毎時0.08~0.15マイクロシーベルトです)。
原発事故はまだ終息しておらず、現在進行中なのです。そのことを我々、特に東京電力管内の人々は忘れるべきではないと、このブログ記事を書くにあたり、あらためて強く思った次第です。NO NUKES!